その笑顔がキライなんだよ。と言ったら困ったように笑いやがった。 その日の散策に、あかねは頼久と詩紋を連れて行ってしまった。 雨の日だというのに張り切った表情のあかねが忘れられない。 ま、きっと頼久あたりが早く帰ろうと促すだろう。 雨に濡れて体を冷やすのを対の青龍は許さない筈だ。 他の八葉は用事がないと知った後、各々の仕事や家に帰って行った。 自分は、といえば特にどうするでもなく今日の予定について思案していた。 そのときギシ、と床の鳴く声がした。 その音に驚いて振り向くと、友雅が立っていた。 緑の長い髪から水が滴っている。 珍しい事があるものだ。 この雨の中、あの鈍い牛車に乗ってこなかったのか? いやそれじゃなくても何か羽織るとか。 「天真だけか。神子殿はもう行ってしまったかい?」 「え?あ、ああ。ついさっき出てったけど」 「そう…残念」 そう言って濡れた髪を鬱陶しそうに書き上げた。 雫が長い髪から落ちて、床に跡ができて染みていった。 「…どうした?」 俺の言葉にチラリと目線をそらしたあと、すぐにあの人当たりのいい笑顔を浮かた。 …なんだよ。聞かれたくないってことか? 「何…」 「俺、その顔キライ」 じっと睨んで言ってやると、一瞬あの笑顔が固まった。 してやったり、と。 「…おや。それは初めて言われたな」 けれど、そんな一瞬の硬直などすぐに戻った。 取り繕ってんじゃねえよ。 …俺、何でこんなイライラしてんだ? コイツがこんなんなんていつものことだろ。 今更… 「それじゃ、私は今日は帰ることにするよ。神子殿に宜しく」 その声で自分が考え込んでいたことに気付く。 おかしい。なんで。 と、またどこかへいってしまいそうな思考を繋ぎとめて 「あ、あぁ。じゃあな」 そう言うと、軽くヒラヒラと手を振って友雅は去って行った。 後に残ったのは、雨で若干薄れた侍従の香り。 線香臭ぇとしか思わなかったけれど、この香りは好きっぽい。 何故か、と考えるのはやめたけど。 今は。まだ。 >>>>>BACK